生理不順を感じたり、PMSや生理痛がつらいと思ったとき、病院を受診したことはありますか? そこまで症状が強くないから、また通常の健康診断で異変がないからと安心して、受診していない人も多いのではないでしょうか。

「早いうちから『かかりつけ医』をもっておくことが、女性として日常生活を快適に過ごす上で重要だと思います」と教えてくれたのは、産婦人科医の富坂美織先生。

婦人科検診を受けるべきタイミングや病院選びのポイント、受診する際の注意点について、富坂先生に聞いてみました。


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年1回は婦人科診察を

会社などの健康診断だと婦人科検診が含まれておらず、オプションで自分から追加しなければ受けられない場合や、婦人科検診が含まれていても「子宮頸がん検診だけ」や「子宮頸がん検診と内診」というように、エコー検査などが含まれない場合も。

「長期間気になっている症状について、健康診断では相談できなかったという声も多く聞くので、意識的に年1回の婦人科診察を受けておくことをおすすめします」と富坂先生。

「『子宮頸がん検診』の受診率を見てみると、欧米では7〜8割といわれているのに対し、日本は5割にも達しておらず、コロナ禍でさらに受診者が減るという状況もありました」

「子宮頸がん検診に関しては、20歳以上であれば、住んでいる市町村からのクーポン送付があり、ほんの一部の自己負担で検査が受けられるようになりました。これは2年に一度、がん検診と内診が基本内容で、学校や職場等の健康診断の機会がない人もぜひ活用してほしいです」

婦人科を受診すべき症状やタイミング

「コロナ禍で、PMSや生理痛など月経関連の不調が悪化したと回答した女性が30%に上るという報告があり、実際に外来でもそういった悩みに多く出会います」と富坂先生。気になることがあれば、一度婦人科を受診することも考えてみましょう。

生殖器系の症状

  • 月経血量が多い
  • 不正出血がある
  • おりものの量が増えた
  • おりものの色が変わった
  • かゆみがある
  • 月経が来ない、または月経が続く
  • 下腹部が痛い
  • 外陰部にできものができた
「また月経前症候群や更年期障害の一部として現れるイライラや気分の落ち込み、寝込んでしまうといった症状も、遠慮せず相談いただければと思います。これらは漢方やホルモン剤で改善することが多いです」
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Maria Maglionico / EyeEm//Getty Images

目立った症状がなくても受診すべき?

目立った症状がないと、受診しなくても大丈夫と思っている人も多いはず。けれど富坂先生によると、女性の身体はホルモン周期の影響を大きく受けるため、不正出血や下腹部痛といった明らかな症状でなくとも、月経前の不調などで日常生活に支障が出て、人知れず悩んでいる人も多いのが現状とのこと。

「また子宮頸がんなどは、症状が出る前の早期の段階で見つけておくことが大事です。ですから、ちょっとしたことでも気軽に相談できて、毎年婦人科チェックを受けられる『かかりつけ医』をもっておくことはとても大切です」

妊娠を望む場合に気をつけるべきこと

「妊娠を望む方は、まずは自分の月経周期に目を向けて、余裕があれば基礎体温表などをつけておくとよいでしょう」と富坂先生。

「エコーで子宮内膜症や筋腫、卵巣嚢腫や多嚢胞性卵巣がないかどうかチェックするととともに、クラミジアなど不妊の原因となる感染症がないか調べて、子宮頸がん検診を受けておくことも必須です。月経不順の人は、ホルモン採血も受けておくとよいですね」
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Prostock-Studio//Getty Images

20〜30代の女性がかかりやすい婦人科の疾患

ここからは20代~30代の女性は、どういった婦人科疾患にかかりやすいのかをご紹介します。

子宮内膜症

20~30代の女性で発症することの多い「子宮内膜症」。子宮内膜に似た組織が、卵巣など子宮の内側以外の場所(卵巣など)にできてしまう状態とのこと。

「癒着などによる痛みを引き起こすとともに、不妊の原因にもなります」

子宮頸がん

最近20~30代の若い女性に増えてきている「子宮頸がん」。原因のほとんどは、性交渉によって感染するヒトパピローマウィルスが原因なので、子宮頸がん検診に加えて、予防ワクチンを打っておくことも有効とのこと。

「ワクチン接種がまだまだ進まない日本では、年間約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3,000人が亡くなるという深刻な状況が続いています。早期発見のためにも、早めの受診がおすすめです」

内診は必ず受けないといけない?

膣の中の状態を、医師が指で確認して診察する「内診」は、抵抗がある人もいるのではないでしょうか? けれど富坂先生によると、不要な場合もあるのだそう。

「エコー検査が含まれていない婦人科検診や、子宮内膜症等で癒着の程度を調べる場合に行うこともあります。ですが多くの場合、エコーにて卵巣や子宮を映し出すほうが確実なので、エコーのある環境では『内診』は不要なことが多いです」

エコー検査を受ける場合、内診台に座り、棒状の超音波検査装置を膣に入れて検査する「経腟エコー」が一般的ですが、別のエコーで行える場合があるとのこと。

「性交渉の経験が無かったり、婦人科検診に強い抵抗がある場合など、場合によっては『経腹エコー』や『経直腸エコー』を行うこともできますので、相談してみてください」

病院選びで重要視すべきポイント

年齢とともに受診する人が増える生活習慣病などと違い、婦人科の病気はコスモポリタン読者層の20~30代に多いのが特徴なんだそう。「早いうちから『かかりつけ医』をもっておくことが、女性として日常生活を快適に過ごす上で重要だと思います」と富坂先生。

富坂先生に聞いた病院選びのポイント

  • 困ったときに気軽に予約が取れる
  • 自宅や職場からアクセスがいい
  • 信頼でき、何でも相談できる
「信頼してなんでも相談できる、心のオアシスとなってくれるような先生を見つけるのが大事です。婦人科は、かなりプライベートな内容や、セクシュアルな面に関わる相談も多くなる科です。私自身も昔から知っている先輩女医さんをかかりつけ医にしていますが、やはり安心感があるというのは大事な要素だと思っています」
 
Maria Maglionico / EyeEm//Getty Images

受診するときに気を付けること

それでは実際に、受診する際のおすすめの服装やデリケートゾーンケアについて聞いてみました。

服装はゆったりしたスカートがおすすめ

内診台へ移動する際や内診台に上がった際、下半身を覆うものがないと気持ちが落ち着かないことも…。そういう場合は、スカートを履いていれば脚がカバーされるので、気持ち的に安心しやすいとのこと。

外陰部を必要以上に洗いすぎない

おりものについての相談の際には、診察の直前、外陰部を刺激の強い石鹸などで洗いすぎないことが大事なんだとか。

「受診時に関わらず、腟や外陰部の洗いすぎが原因でのトラブルも多いので、それを防ぐためにも大切なことです」

月経時は避ける

子宮頸がん検診を受ける際は、月経時は避けましょう。ただ不妊検査の場合には、月経時にあえてエコー検査をする場合もあるので、診察前に確認するのが◎。

不安があったら伝える

最後に、「何か不安があったら遠慮なく伝えることが一番大切です」と富坂先生。

「内診や膣エコーに抵抗がある場合など、ささいなことと思わずに何でも相談してみましょう」

相談しづらい女性特有の悩みだけれど、自分の身体をしっかりと理解し、正しい知識をもとにリスクに対処していくことは大切なこと。

これからの人生を健康的に過ごすため、年に1回は婦人科を受診しましょう。

お話を伺ったのは…

産婦人科医 富坂 美織先生

 
冨坂美織先生
産婦人科医、医学博士。不妊治療を専門とし、テレビや雑誌など、幅広いメディアで活躍中。さくらウィメンズクリニック勤務の他、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師も務める。著書に『2人で知っておきたい 妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)など。

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