欧米を中心に広まった「ボディ・ポジティブ」という言葉や概念が、日本でも少しずつ知られるようになってきた昨今。
「外見や体型へのコンプレックスを受け入れ、自分の体を愛す」というボディ・ポジティビティに対し、「ポジティブになれなくても大丈夫」という考え方を提唱する「ボディ・ニュートラリティ」が、最近では注目を集めています。
そこで本記事では「ボディ・ニュートラリティ」の考え方と「ボディ・ポジティビティ」との違いについてお届けします。
【INDEX】
「ボディ・ポジティビティ」との違い
中立性という意味の英語が含まれた「ボディ・ニュートラリティ」とは、自分の外見や体型に対する感じ方を、そのまま受け入れるということ。
一方で、「ボディ・ポジティビティ」は、自分の外見や体型を愛そうと努力することを前提とした考え方です。自分の見た目や体格に対するコンプレックスを肯定することを推奨していますが、中には無理に自分を納得させることに抵抗を抱いたり、頭で「ボディ・ポジティビティ」を理解していても、本質はなかなか変わらないと感じる人も。
フィットネスアプリを提供する<Jabbie Fitness Community App>の創設者であるジョイ・コックス博士は、「ボディ・ニュートラリティを心がけるということは、身体のコンプレックスに対して抱くネガティブな感情を否定するのではなく、受け入れる機会を与えること」だと説明します。
「ボディ・ニュートラルであるということは、“ボディ・ポジティブ”になれない自分を受け入れることともいえます 」
米学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」が発表した研究では、ネガティブな感情を元に自分を見ようとすると、羞恥心と罪悪感が意識に刻み込まれ、そのサイクルが習慣となってしまう可能性を示唆。ネガティブな感情を持つことを許すことで、メンタルヘルスが改善されるという結論を導き出すことができたのだそう。
つまり、自分のコンプレックスに対して負の感情を持ち続けることと同様に、肯定感を持てない自分自身を許せないことも、セルフ・イメージやメンタルヘルスにダメージを与える可能性があるとのこと。
特に、摂食障害や性別違和症候群、不安症やうつ症状に苦しむ人にとって、「ボディ・ポジティブ」になること自体に負担を感じてしまうこともあるのです。
そのため、“自分の体を愛せないときもある”と受け入れることが、ボディ・ニュートラリティを実践するうえで一番大切な姿勢だと、<Body Liberation Project>の創設者で、ライターやフィットネスコーチとしても活躍するクリッシー・キングさんは説明します。
「ボディ・ニュートラリティ」を実践するには
ボディ・ニュートラリティを実践するために、以下の観点や考え方を参考にしましょう。
ボディイメージはすぐに書き換えられるものではない
SNSやインターネット、テレビなどが台頭する情報社会では、“痩せていることが正義”という考え方やダイエットカルチャーが助長され、私たちのボディ・イメージに多大な影響を及ぼしています。
ある特定の外見が理想だと感じてしまうことは、自分自身に問題があるのではなく、社会などの外部的要因によるもの。自分が抱くボディ・イメージは、すぐに消したり改善できるものではないという考え方を持つだけで、自分への思いやりに繋がるはず。
ネガティブな感情には根源がある
自分の体に対するコンプレックスは、それを抱くようになったキッカケが必ずあるもの。
周りの人々に言われた一言や、SNSなどで人と自分を比べてしまった経験などを顧みながら、コンプレックスやネガティブな感情を持つようになった根源を突き止めてみましょう。そして、“こういう見た目であるべき”という考え方は、人々が作り出した幻想であるということを認識することが大切です。
体は自分を生かしてくれている
体の外見よりも、内面でどのような働きをしているかに目を向けてみましょう。
心臓が脈打ち、胃や腸で栄養を吸収し、筋肉が正常に機能するなど、日常生活を送るうえで体が自分自身をどう支えてくれているかを意識することで、自分の体に対する感謝の気持ちが芽生えてくるはず。
体は常に変化する
健康状態や年齢によって、体の調子や状態は常に変わるもの。中には、病気やケガによる、ポジティブに受け入れることが難しい体の変化もあるはず。
ポジティブにとらえようとするよりも、自分でコントロールができないことを、あるがままに受け入れることによって救われることも。
外見は自分の特徴の一部でしかない
外見は自分を特徴づける一つの側面ではありますが、体型や見た目によって人を定義することはできません。
キングさんによると、「人の本質は感情の在り方や考え方などに反映されるもので、体はそれを磨く経験を積むために動かす船のようなもの」という考え方を持つことがオススメとのこと。
頑張りすぎないこと、そしてセルフ・コンパッション(自分自身への慈しみ)を持つことが、一番の鍵となるのかもしれません。
※この翻訳は抄訳です。
Translation: ARI