女性の社会進出が一般的になりつつある一方で、意思決定の場や、リーダー層への女性の登用がまだまだ少ない昨今。女性の活躍やキャリアアップを後押しするためには、一体どんなサポートが必要なのでしょうか…?

国際女性デー・女性史月間の今月は、コミュニティのリーダーとして活躍する4名のZ世代にインタビュー。活動を始めたきっかけから、リーダーに必要だと感じる要素、女性であることでぶつかった壁、今後の目標などを伺いました。


【INDEX】


参加者プロフィール

■Momoko Nojo(23歳)

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若い世代の政治参加を促す団体「NO YOUTH NO JAPAN」の創設者で、気候正義や社会に対して声を上げる活動家たちが暮らす「アクティビストハウス」の発起人でもあるMomokoさん(23歳)。

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■Aya Murakami(22歳)

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「世界に通用する地域文化ブランドを創る」--株式会社Ay代表 のAyaさん(22歳)。出身地である群馬県の絹織物「銘仙」を洋服や小物にアップサイクルし、地域と文化を繋ぐものづくりを行っています。

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■Lily Ito(19歳)

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義務教育へのジェンダー教育導入を目指して活動している「youth_genderstudies」の創設者Lilyさん(19歳)。自身のSNSでは、フェミニズムや社会問題について、Youth世代の視点から発信しています。

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■Urara Takaseki(23歳)

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入院中の子どもたちに学びを届ける「NPO Your school」の副代表で、都市開発スタートアップ企業「scheme verge」のチーフ・アーバン・オフィサーを務めるUraraさん(23歳)。

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活動を始めたきっかけを教えて下さい。

Urara「入院中の子どもたちに学びを届ける『NPO Your school』を立ち上げたきっかけは、大学生のときに、入院中の子どもに学習支援のボランティア活動をしていた医療系学生と出会ったこと。

私は大学で学生向けの起業支援をしていたから、医療系の知識はないけれど、資金調達や組織のまとめ方などのノウハウは持ち合わせていて。医療系学生の仲間と一緒に非営利団体を立ち上げ、今は副理事長として活動をしてます 」

Lily「私が義務教育へのジェンダー教育導入を目指して活動しているのは、『女性だから』とか、理不尽な理由でキャリアを諦めなければならない人がいる現実を知って、衝撃を受けたから。自分の将来のためにも、今から行動を起こせば社会を変えられるのではないかと思って、フェミニズムの啓蒙活動を始めました」

Aya「私が会社を立ち上げた始めたきっかけは、アフリカ・コンゴ民主共和国に渡航したときの経験です。現地の経済や社会の持続可能な発展に貢献するには、お互いに高め合えるビジネス面でのアプローチが一番だと思って、現地のコンゴ人と一緒に服作りを始め、日本で販売するビジネスを始めました。

コロナ禍の今は、『文化的背景を理解しながら、新しい価値を生み出す』を軸に、私の出身地である群馬県の絹織物『銘仙』をアップサイクルした洋服や小物を展開しています」

Momoko「私はもともと政治への関心が強い方で、大学2年生のときに衆議院選挙のインターンをした経験があるんです。そこで気づいたのは、若者の政治への関心が低い理由は、お互いに遠ざけてしまうようなアプローチ方法にあるのではないかということ。

若者の投票率が80%を超えるデンマーク留学をきっかけに、『政治』をもっと身近に感じてもらいという想いが強くなって、Instagramの投稿を始めました。それが『NO YOUTH NO JAPAN』の始まりです」

もともと「リーダー」という立場になりたいという願望はありましたか?

Momoko「実は、『リーダーになりたい』と思ったことは全くなくて…(笑)。今まで組織のトップになったことなんて、中学時代の選挙管理委員長や、高校時代に所属していた登山部の副部長くらい。どちらかと言うと、二番手としてリーダーを支える方が得意だと思っていました。

『NO YOUTH NO JAPAN』に関しても、選挙プロジェクトを率いてくれる人が自分のほかにいなかったから、リーダーになったという感じ。でも、人をワクワクさせたり、コミュニケーションをとるのが好きな性格だから、いざなってみると意外と向いていることに気づきました。

ただ、その割には細かい意思決定に関わるのが苦手で(笑)。私は完全に、それぞれのプロジェクトリーダーを信頼して、任せるタイプのリーダーです。だからこそ、失敗しちゃったときも、『しょうがない』と割り切れるのかも」

Urara「なるほど。私はどちらかと言うと、小学生の頃からスポーツチームのキャプテンを任されたりしていたから、『リーダー』へのハードルがもともと高くなかった気がします。

でも、Momokoさんと一緒で、自分から立候補したというよりは、自分のほかにいなかったというパターンが多いですね。細かい事務作業は苦手だけど、人と関わることや採用、大きな意思決定を担うのが好きで、そういった面では向いているのかも…!」

Lily「私は逆に、今までリーダーになった経験は一度もなかったし、自分から声をあげるようなタイプでもなかったんです。でも、いざ思い立って言葉にしたときに、『ビジョンが素敵だ』と周りから声援をもらって。それがきっかけで自信がついて、この活動を始めようと思えました」

Aya「私も同じで、どうしても実現したいことがあるから、『自分がやるしかない』という思いでした。でも皆さんと比べると、やっぱりリーダーは向いていないと感じる部分はありますね」

Urara「どんな理由で、向いていないと思うんですか?」

Aya「人との信頼関係を築くのに、時間がかかってしまうタイプで。試行錯誤しながら、チームの在り方を模索しているところです」

リーダーに必要だと感じる要素はありますか?

Urara「あくまでも個人的な意見ですが、人を導くうえで大切なのは、成功イメージを想像して伝える力

あとは、すべてのことに言えることですが、完璧にこだわらず、失敗を恐れずに挑戦する勇気。育成面でも、一人ひとりのインセンティブや強みを最大限に活かすには、まず相手をちゃんと信頼して、任せてみることが前提にある気がするんです!」

Aya本当に実現できるのかわからないようなビジョンでも、ちゃんと口に出すことが大切ですよね。そこから逆算するように計画を練れば、いつか叶うわけだし。逆に、現状で実現可能な目標を掲げてしまうと、向上心の妨げにもなってしまう気がする…」

Lily「私は、団体として活動している以上、メンバー全員が同じベクトルをむいている必要があるから、自分が作りたい理想の社会やビジョンを共有する機会をたくさん設けるようにしてます!」

Momoko「大学の授業で習って共感したのは、リーダーとリーダーシップは違うということ。リーダーシップ(責任感)は一人ひとりが持つべきもので、何かを任されたのであれば、最後まで責任をもって目標に導く必要があると思うんです。

リーダーはあくまでもポジションであって、その役割を担うのは、一番能力がある人である必要はない気がしていて私は、自分の実現したいことに最後までコミットする覚悟を持ち、その熱意で困難を乗り切れる人なのかなと思ってます。だからこそ、誰よりも組織のことが好きと言える人でありたい…!」

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性差別を受けた経験はありますか?

Momoko「個人的な性差別を経験したことはあまりないけど、モヤモヤすることはありますね。男性が多いなか、女性枠として呼ばれているな”と感じるときや、飲み会で『女性はここ座ってよ』など、“モノ扱い”されているように感じるときとか。

正直、こういった差別のなかには、傷つける意図は皆無で、無意識のものも多いから、一つひとつ闘ってこれたかというと、そうではありません。それに、自分が生きていくうえで、見過ごしてしまったことも。でも、このままだといつまで経ってもジェンダーギャップはなくならないから、悶々としている感じです。

『NO YOUTH NO JAPAN』のメンバーのほとんどは女性だから、今後、男性が多いコミュニティを率いることになったときは、今感じることのない壁にぶつかる気がします

Urara「女性に向けられるアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)は、悪意がないとわかっていても、感じてしまう。たとえば、バリバリ働いている女性に対して、『結婚できないんじゃないか』と心配をするのは、失礼にあたることも。

でもMomokoさんと同じく、私も個人的に性差別を感じた経験はほとんどなくて。ひょっとすると、私は『高学歴』のラベルに守られているのかもしれなくて、そうでない女性に対する社会の見方は違うのかもしれないと思うと、むずがゆい部分はあります」

Aya「私も二人と一緒で、直接的な被害はほとんどありません。でも、私が属している起業家コミュニティの9割は男性で、その圧倒的な人数比からモヤモヤする部分はあります。聞いたところ、応募する女性がそもそも少ないから、運営側は採るにも採れないみたいで…。

あとは、『男は仕事、女は家庭』という概念がまだ強く根付いている地域もあること。でも、この価値観の偏りは、多様性を学ぶ機会が都市部と比べて少ないことが原因であって、改善の余地はあると思うんです」

Lily「私は自分のSNSに水着の写真を載せたとき、『自ら性的対象になろうとしている』と示唆するような、卑猥なコメントを残されたことがあって。“いまだにこんなことを言う人がいるんだ”と、とても悲しくなったと同時に、こういった考えが根付いている社会を変えたいという力になりました」

家族とフェミニズムについて話したことはありますか?

Aya「若くして出産した私の母は、当時、キャリアを諦めざるを得なかったみたいで。だから私には、結婚を急ぐ必要はないし、自分のやりたいことやるべきだと背中を押してくれました。そんな母の教えもあって、自然と自立心が芽生えたのかも。

うちの家庭は父のほうが立場が強くて、それこそ『男は仕事、女は家庭』という考え方だったけど、『女性にだって、家庭以外で活躍する選択肢がある』と私が体現してからは、今までの“強かったお父さん像”が和らいだ気がします。機会がなかっただけで、知れば理解をしてくれることに気づきました」

Lily「家族とのちょっとした会話の中で、性差別的な意識が残っているのを感じることはあります。同居している両親や祖父母に『お金持ちになりたい』と言ったとき、『玉の輿に乗ったらいいよ』と言われたり…。でもそれは、彼らの時代に自立して成功している女性が少なかったから。

私の活動を理解して応援してくれている今は、ふと『女の子だから』という言葉が出たときに、『それは性別関係なくない?』という会話が生まれるようになった! 一番近い家族から意識を変えられるのではないですかね」

Momoko「私自身は専業主婦家庭で育ったから、幼い頃は、女性は家にいるものなのだと思ってました。でもある日、祖母が女性であることを理由に、大学に進学させてもらえなくて、やるせなさを感じて大人になったことを知って…。『自分ができなかった分、たくさん勉強してほしい』と私の背中を押してくれたんです。

フェミニズムを学んでからは、母に『こんなことまでしなくていいんだよ』と伝えたこともありました。でも彼女はこういった生活を何十年も続けているし、好きでやっているところもあるから、折り合いをつけるのをやめて、尊重するようになりました。

一方で、父に対しては『さすがにこれは自分でやりなよ』と妹と口うるさく言い続けたところ、かなり効果は感じてます!

Urara「私は人生のほとんどを母と妹と過ごしてきたから、父親からどうこう言われたことはあまりなくて。だけど、何から何まですべてを一人で担う母の背中を見て、『女性だって働いていいんだ』というよりは、『女性も自立していなければならない』と学びましたね。

離婚したとき、不利になるのは女性が多いからこそ、『いい暮らしをしたいなら、いい夫を見つけよう』とか、他人に依存するような考えには危機感を覚えてます。

家族内の性別役割分業を考えると、母と妹はどちらかと言うと家で料理をしたり、のんびりしたりするのが好きな性格で。だからか、出張から戻ると『お父さんみたい』と言われることも。“出張=父親の役割ではないぞ”と軽くツッコんで済むことがほとんどだけど、価値観の違いは多少なりともありますね」

女性が社会でもっと活躍するためには、どのようなサポートが必要だと感じますか?

Urara『目立つことは悪いことじゃない』と実感できる環境づくりが大切だと思います。女性リーダーの存在に慣れていない今の社会で、私たちが前に立つことには大きな意味があるんじゃないかと。

次に、女性に求められる容姿の美しさの基準について疑問視してます。モデルの経験がある私は、『痩せていた方がいい』『筋肉はつけすぎないで』『日焼けは避けるべき』などのモデルに課されるルールを知ったとき、“特定の人を縛ってしまうのでは”と危機感を覚えました。

それは、これらの条件を満たしていない人の自信を奪ったり、他人が決めた美の基準に合わせようと、無駄なエネルギーを注がせたりしてしまうから。女性がプレッシャーを感じやすいことだからこそ、もったいないと感じてしまうんです」

Aya「そうですね。女性が何かしたいと思っても一歩踏み出せないのは、周りの価値観が大きな要因にあると思います。飲み会の席では女性がお酒を注いだり、結婚が遅いのは焦るべきことだったりと、色々なシーンで求められる『女性らしさ』のプレッシャーが大きく影響しているはず」

Lily「たしかに、女性のリーダーが少ない原因は、女性に求められる『モテ要素』にもあるんじゃないかと思います。『女の子は聞き役に回ったほうがモテる』とよく聞くけど、それに対して、社会で活躍するリーダーの多くは、『意見をしっかり言える人』。この価値観をもっとアップデートしていきたいですね」

Momoko「上の世代と比較すると、私たちの世代で『男性優位』の思考はそこまで浸透していないと思います。それでもまだ壁を感じるのは、子育ては女性が主担当であるという固定概念。たとえば、男性が半年育休をとると『いい旦那さん』と褒め称えられる一方で、女性はそう言われない傾向に。私たちの世代でも育児がキャリア形成の壁になっているのは、会社の制度はもちろん、社会のプレッシャーも関係していると思うんです。

あとは、『女性の活躍』や『ジェンダーの平等』をここ最近よく聞くようになったけど、その趣旨が間違っているのではないかと感じる場面も。これは人権の問題であって、一人ひとりに自由な選択肢がある社会が最終ゴールなはず。

女性の活躍促進の理由は、『役に立つから』でも『労働力が足りないから』でもないはずなんです。働く女性が増えているのにも関わらず、政治家や管理職などの意思決定層に女性がほとんどいないのは、こういった最終ゴールのズレが関係しているのではないですかね」

今後の目標を教えて下さい。

Urara「アメリカに住んでいたときは女子サッカーチームに入っていたものの、日本に帰国してからは全然見つからなくて。その理由は簡単で、周りにサッカーをやりたい女の子がいなかったから。当時のモヤモヤした思いが、“女性だってサッカーをしてもいいし、むしろかっこよく見せたい”というモチベーションになり、気づいたらあらゆるシーンで、女性から憧れられる存在になりたいと思うように。

今の時点で、ありがたいことにその夢は叶いました。でも、『Uraraさんみたいになりたい』と言ってもらえても、その先には『でも私にはできそうにない』という言葉が続いていて…。今の目標は、彼女たちを後押ししたり、巻き込こんだり、サポートしたりすることです!

Momoko「私の団体は、政治参加を増やすために活動しています。本当はみんなに関わる話だからこそ、より多くの人に関心を持ってもらえるようなアプローチは続けたい。でないと、多様な意見は反映させれないから。

個人的な今後の目標は、『若者や女性の代表』ではなくて、『自分だから言えること』を持っていたい! 今は、若い世代とか、女性であることから声をかけていただくことが多いけど、今の立場に甘えずに、今後も通用する専門性が欲しいです」

Lily「固定概念から束縛される社会から、自分らしさで輝ける社会作りに貢献したい。言葉にするだけなら簡単だけど、みんながそういった意識を持てるように、今の活動続けます。

だからこそ、ジェンダー問題を話すことへのハードルを下げることが大切だと思っていて。これからの社会を担う子どもたちや若い世代のために、性別に関わらず、それぞれがエンパワーメントし合える環境を、小さい頃から整えてあげられるよう頑張りたいです」

Aya『女性』起業家、『女性』活動家という性別の肩書きがなくなるような社会を目指すには、一個人としてもっと頑張らなきゃと感じてます。昔の古き良き文化は、ときに現代に合わせてアップデートしていかないといけないことがあります。時代は私たちが作るからこそ、ブランドとしても、その新しい時代作りに貢献したいです