セックストイとは、セルフプレジャーのためにひとりで使ったり、パートナーとのスキンシップを育んだりするときに活躍するアイテムのこと。近年生まれるものはどれもデザインも肌触りも良く、メーカーのこだわりがつまった愛らしいものばかり。わたしたちの性を肯定して、心身ともに満たされる時間をともにしてきたトイたち。選ぶのも、買うのも、使うのも、何かと思い入れがある人も多いのではないでしょうか。

この連載では、セックストイを実際に使うみんなの「お気に入りのセックストイ」にまつわるエピソードを紹介します。第一回は、自身のYouTubeチャンネル「ありさきちゃんねる」で包括的性教育について発信などをするアリサさんに、思い入れやヒストリーを語ってもらいました。

アリサさん

 
Arisa
(they/them)。包括的性教育をメインテーマとしたYouTube「ありさきちゃんねる」の配信や、コンテンツの企画、編集、執筆、その他有志アクションに参加するなど、幅広く活動中。幼少期〜学生時代の自身の経験をきっかけに、ジェンダーや性について関心を持つ。「こころに豊かさを満たしていく光であり、ときに生活に不可欠な灯ともなりうる、誰かにとってのちいさなキャンドルのような存在になりたい」と、日々模索中。

私のお気に入りのセックストイ

「iroha stick」

テンガが手掛けるセックストイブランド「iroha」によるスティック型のセックストイ。「それは、メイクをするのと同じくらい自然なこと」と提唱し、セルフプレジャーを生活の一部だと肯定する存在です。

コンパクトなサイズに加えて、キャップ付きなので清潔に保ったまま持ち運びが可能。メイク道具のようにキュートな見た目が特徴です。手に取りやすい価格を実現しました。

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「womanizer」

2014年、ドイツ生まれの吸引系セックストイ。 現地の発明家のマイケル・レンケとその妻のブリジット・レンケが、7年の歳月と数百万回のテストを繰り返して誕生。平等や多様性、セクシャルエンパワーメントを掲げています。クリトリスを覆うようにあてがうことで、カップの縁が振動を与えつつ、先端部分を優しく吸引します。

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私にとってお気に入りの理由

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Arisa

「iroha stick」は、威圧感のない見た目のデザインやサイズ、そして(私にとって)無理せず気軽に買える価格帯であることが、本当の意味でリラックスを自分に与えてくれるように感じます。でも、機能はちゃんと優れていて、繊細な作りなのがすごいんです。

振動の強弱を簡単な操作で調整できたり、先端に切り込みの形状があったりすることで、自分の心身が今何を求めているのかということを細やかにコントロールしながら感じることができます。

そうやって「自分で自分をコントロールできている」という感覚がもてることは、自分の存在そのものを認めたり、受け容れたり、労ったりすることにもつながると思います。

ちなみに今まで購入したことのあるセックストイは3つ。そのうちの最初に購入した1つは残念ながら壊れてしまいました。1回使い切りのツールも含めたら5~6個は購入したことがあると思います。

繰り返し使うことで、心身にゆったり馴染ませていくトイの方が自分にはフィットしているように感じています。焦らず、ゆっくり、何度かためしてみるうちに、やっと自分のことが少しだけ分かってくる気がするんです。

セックストイはどこで購入した?

当時住んでいた一人暮らしの自宅から徒歩3分のところにあった薬局で購入しました。薬局で他の日用品の買い物をしている最中に、「そういえば家にあるトイ、壊れたんだった…」と、ふと思い出して。

男性器用のセルフプレジャーグッズや、相手のいる性行為が想定された潤滑剤などは身近な薬局でも見たことがありました。ですが、「女性器」を持ち「セルフプレジャー」を望んでいる自分のためのグッズはまだまだ世の中に少なかったり・受け入れられていなかったりしているのだろうと思い込んでいたんです。

「近所のこんな小さい薬局になんてあるわけない」と諦め半分で店内を見ていたら、目の前に「iroha stick」が現れました!

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Arisa
「iroha stick」

今思えば種類はその1つだけだったし、選択肢が豊富だったとは決して言えません。しかし、(大げさかもしれないけれど)当時の自分にとっては「自分のような人が、自分の心身に、自分で快楽を求めることが社会から受け入れられている」と感じられて、とても励まされた記憶が残っています。

はじめてセックストイを買った・使ってみたきっかけは?

過去の自分は、本気で「自分の身体は“ペニスを挿入される(したいと思わせる)”」ためにあるものだと思い込んでいました。

でもそれって自分に対してもすごく暴力的だった。加えて、シスヘテロ規範の強化や、性暴力の不可視化など、望ましくない社会のあり方に加担してしまう考え方だったと今は思います。

それらの問題に気づいたとき、過去の考え方から抜け出していくための方法の1つとして「セルフプレジャー」や「セックストイ」に興味をもち、トイを使ってみるようになりました。

頭で考えることも重要ですが、自分に染み付いた考え方から感覚的にも脱出するためには必要な時間だったと思います。

セックストイに対するこれまでのイメージと、今の自分にとっての存在は?

ラブホテルなど、場所によっては「電マ」と言われるようなセックストイが用意されていることもありますよね。自分の日常でセックストイに触れることはなく、ある種「特別な場面」だけで登場するものだったので、昔の自分にとっては「よく分からなくて、なんか怖いもの」でした。

自ら手に取ったり、ましてや、自分の思うようにトイを活用するなんてことはできるはずなく、「他人から向けられる怖い武器」とまで思っていたかもしれません。でも今は、まるで違います。

「自分の存在をちゃんと認めて受け容れる」ための拠り所のようなもの。「自分のもとに自分を取り戻したい」。そう思ったときに私はセックストイに手を伸ばしたくなります。

向き合った結果出合った、思い入れがあるセックストイ

「トイ」自体にプロダクトとして本当に興味関心をちゃんと持てるようになったのは、ごく最近のことかもしれません。バイブレーター型のトイが心身に馴染んできて、ようやく新たな模索をしてみたいという好奇心が出てきました。そこで、今までと異なる形式のトイとして出合ったのが「womanizer」です。

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Arisa
「womanizer」

元々は単なる「性的な快楽」というよりも「自分の存在を受け容れて確認していく作業」のツールとしてトイを使用していたので、そのフェーズを少し満たすことができたからこそ「好奇心」という新たなステップが見えてきたんだと思います。「womanizer」は自分の性の旅の経過を感じられることから、思い入れのあるトイです。

でも、実際に使ってみると、最初の方はうまくできなくて。そんなときは、これまで使ってきた馴染みのあるトイや方法で緊張をときほぐしながら、「今の自分ならちょっと新しいトイも試してみたいかも」と“本当に”思えたときだけ「womanizer」を取り入れてみる、など、決して無理はしないことを大切にしています。

その表現が正しいかは分からないけれど、「自分で、自分自身の本心に対して、“同意をとる”」ようなことを毎回しているんだと思います。

今一番気になっているセックストイは?

単純に「かわいいな」と自分の直感をくすぐられるようなプロダクトを出しているブランド、「Unbound」が気になっています。

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私は単純に色としての「ピンク」は大好き。ただ一般的に「女性向け」とされているプロダクトや「性」と関連するプロダクトにおいて、ピンク色が起用されることが多い印象があり、それについては疑問に思うことがあります。

その点、「Unbound」のトイはカラーリングも豊富で、「自分のためのもの」を見つけられそうな気がしています。どんな機能や種類のトイがあるのか調べて新たなお気に入りを見つけたいです!